Victor Gaviria&"Rodrigo D: No Futuro"/メデジン、俺たちに未来はない
"Rodrigo D: No Futuro" / "ロドリゴ・D: 未来なし" (監督:Victor Gaviria, コロンビア, 1990)
舞台は1988年のコロンビアはメデジン。この地のスラム街にロドリゴという青年が住んでいた。彼は貧困に喘ぐ生活を送っていたが、1つ大きな夢があった。それはパンクバンドを結成することだ。彼自身はドラマーとして肌身離さずドラムスティックを持つ生活を送っていたが、この地でバンドを組むことはそう簡単なことではないようだ。
今作は1990年製作で、コロンビア映画としては初めてカンヌ映画祭に出品された記念すべき映画だという。中身はかなりネオリアリズモに寄ってる(題名が示唆する通り、元ネタはデ・シーカの「ウンベルトD」らしい)。スラム街に生きるティーンエイジャーたちの姿を、息苦しい現実そのまま描き出す感じには、その生々しい空気感が伝わってくる。バイクで走行途中に銃を持った強盗に詰め寄られたり、廃墟の薄汚れた壁にスティックを叩きつけたり、そういう場面がかなりリアルに迫ってくる。コロンビアorメデジンのパンク文化が鮮烈に伝わってくるところもいい。
監督Victor Gaviria(ビクトル・ガビリア)はメデジン密着型の映画作家でこの後も“La vendedora de rosas ”など、その地の実際のストリートチルドレンを起用して映画を製作するリアリズム的な趣向を取っている。だから腰の入りようが半端でなく、今作の静かな衝撃もなかなかデカい。荒廃の詩情が青年たちのパンキッシュな絶叫と共に爆ぜる中で、彼らは逃れられない絶望に陥ることになる。ラストなんかロドリゴとその仲間たちはそれぞれの暴力の中で、敢えなく絶命することになる。追い討ちをかけるようにEDでは“撮影中や撮影後に、俳優の何人かは暴力によって実際亡くなってしまいました”という字幕が出る。それでもこの後に出てくる字幕が今作の存在意義を示している。“しかしこの映画が完成したことで、彼らは今後もみなと同じように生き続けることが出来るでしょう”