鉄腸野郎と昔の未公開映画を観てみよう!

鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!の別館。ここでは普通の映画史からは遠く隔たった、オルタナティブな"私"の映画史を綴ることを目的としています。主に旧作を紹介。

Jaime Osorio Gómez&"Confesión a Laura"/暴力の時代、あの日秘めていた愛

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"Confesión a Laura" / "ラウラへの告白" (監督:Jaime Osorio Gómez, コロンビア, 1990)

1948年コロンビアはボゴタ自由党のカリスマ的政治家Jorge Eliécer Gaitán(ホルヘ・エリエセル・ガイタン)の暗殺をきっかけにこの地で最も大きな暴動の1つであるボゴタ暴動が勃発した。町は暴力によって荒れ果て、日常においても常に建物の天井に狙撃主が待機し、敵性分子を抹殺しようとする末期的な状況が広がっていた。

そんな中でドン・サンティアゴは妻のホセフィーナに懇願され、向かいのマンションに住む友人のラウラに誕生日のケーキを届けに行く。彼女の元へと辿り着いたはいいが、暴動が激化し、外に出ることが難しくなったゆえ、彼はラウラの部屋に滞在することになる。二人はしばし会話を楽しむのだったが……

コロンビアといえば内戦もしくは麻薬戦争における暴力という印象だが、今作はそういったイメージとは真逆の静かで大人なラブストーリーである。ラウラは未婚の中年女性、いわゆるオールドミスなのだが、その理由は秘めたる恋心、ドン・サンティアゴへの長きに渡る恋心な訳である。それが二人の何気ない会話、何気ない挙動の数々から、昔に忘れてきた愛として結実を果たす姿は何とも滋味深く、素晴らしい。舞台はほぼラウラの部屋のみだが、現れる感情は息を呑むほど豊かだ。

今作を観たきっかけは「大河の抱擁」で日本でも話題なコロンビア映画界の俊英シーロ・ゲーラが必見のコロンビア映画として挙げていたからだ。映画史的に古くから豊かなラテンアメリカの中でも、イマイチ話題には上がらないコロンビアだが(私が話したコロンビアの映画作家も自国の映画がメキシコなどの周辺諸国ですら無名なのを残念がっていた)今作を観れば、その豊穣さに映画史を探索したくなること請け合いである。