鉄腸野郎と昔の未公開映画を観てみよう!

鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!の別館。ここでは普通の映画史からは遠く隔たった、オルタナティブな"私"の映画史を綴ることを目的としています。主に旧作を紹介。

Kristaq Dhamo&"Tana"/アルバニア映画の夜明け来たる

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"Tana" / "タナ" (監督:Kristaq Dhamo, アルバニア, 1958)

舞台はアルバニアの山奥に位置する農村、ここにタナという若い女性が住んでいた。彼女は明るく活発な女性で、ステファンという青年と恋仲にある。しかし彼女たちには障壁もある。旧弊的な考えを持っている祖父やステファンに嫉妬する男レフテルだ。そんな中でもタナは日々を逞しく生きていく。

今作は1958年に製作されたアルバニア映画であるが、何と今作こそがアルバニア映画史においては初の長編映画なのだそうだ。そういう意味ではかなりエポックメイキングな作品である。物語はタナの姿を通じて、アルバニアの現在を描き出そうとする。野原で戯れる恋人たちの爽やかさ、男たちに混じって鉱山で鉱石を採掘したり畑を耕したりする若さ。そういうものが鮮やかに描かれる。

演出は、映画史が浅いからか、50年代より以前のサイレント映画を彷彿とさせるものになっている。例えば20年代30年代のソ連映画などのように、農作業などに明け暮れる人々やアルバニアの広大な大地が、言葉を介在させることなく、雄大に綴られていくのだ。

後半からはタナの視点を離れ始め、社会主義の波がやってきたことによって村やそこに住む人々がどう順応していくかという大局的な物語になっていく。原作・脚本のFatmir Gjata(ファトミル・ジャタ)は小説家でもあるのだが、社会主義リアリズムで有名な作家だそうだ。ということで社会主義一直線な訳で、旧態依然とした考えを持つタナの祖父は突然くたばり、タナとステファンは試練を乗り越え、社会主義な村でキャッキャウフフとなり終幕する。正に時代といった風である。

今作の監督Kristaq Dhamo(クリスタク・ジャモ)は、先述の事情があるようにアルバニア映画史において長編映画を監督した初めての映画作家という訳である。そして今作は第1回モスクワ国際映画祭に出品されてもいる。ソ連および社会主義とはズブズブである。この後Dhamoはアルバニア人スパイの姿を描き出したエスピオナージュもの"Detyrë e posaçme"(1963)やトラクター乗りを夢見る女性と夫との軋轢を描いた“Brazdat”(1973)などを作り、アルバニア映画史にその名を残している。

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