鉄腸野郎と昔の未公開映画を観てみよう!

鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!の別館。ここでは普通の映画史からは遠く隔たった、オルタナティブな"私"の映画史を綴ることを目的としています。主に旧作を紹介。

Xhanfise Keko&"Partizani i vogël Velo"/大いなるアルバニアを守るため

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"Partizani i vogël Velo"/ "ヴェロ、小さなパルチザン" (監督:Xhanfise Keko, アルバニア 1980)

少年ヴェロはアルバニアの雪の山奥で父と幸せに暮らしていた。しかしパルチザンと疑われた父が無残に射殺された後、彼は復讐の為パルチザンに入隊したいと願うようになる。村の人々は天涯孤独になった彼を暖かく迎えるのだが、ヴェロの中で復讐心はどんどん募っていく。

さて、アルバニア映画界において最も重要な映画作家は誰か?と世界のシネフィルに訊いたなら、間違いなく大多数の人々が答える名前こそXhanfise Keko(ジャンフィゼ・ケコ)だ。彼女はアルバニア映画のパイオニアとして何十年に渡って映画を製作し続けた人物である。その映画はどれも子供を主人公としたもので、その意味で彼女は"アルバニアアッバス・キアロスタミ"と言える。彼女の代表作といえば、ドイツ占領下の首都ティラナでサボタージュ活動をする少年の姿を描いた"Tomka dhe shokët e tij"(1977)だが、天邪鬼な私がまず紹介するのはそれではなく1980年製作の"Partizani i vogël Velo "だ。

Ketoはまずヴェロの暮らしぶりを鷹揚たる筆致で描き出す。アルバニアの自然は広大で懐が深い。雪の純白に包まれた自然における暮らしは過酷なものであると同時に、豊かさにも満ち溢れている。そして春が来れば深い緑が周りには広がり、人々を優しく包みこむこととなる。そんな鷹揚さを反映するように人々も優しさに溢れている。だがヴェロはそれだけでは我慢できないのである。

ヴェロは愛犬と共に危険な山々を越えて、パルチザンたちと合流することになる。しかし彼らはヴェロの年齢を理由に、パルチザンへの入隊を断るのだ。失意のうちにヴェロは村へと戻るのだが、諦めきれない彼はパルチザンの元へ舞い戻ることになる。

第2次世界大戦時のアルバニアは激動の運命にあった。1939年からはイタリアの占領下に入り苦渋を舐めたかと思うと、イタリアが降伏した1943年以降はドイツの占領下に入ってしまう。そうして苦しみを味わい続けたアルバニアだからこそ、戦後にはその過去を振り払おうと、その時代に勇敢に戦い続けた戦士たちを賞賛する映画を作り続けるのだろう。今作も正に敵兵を勇敢に射殺したヴェロが、独りで大いなる自然へと旅立つ姿で幕を閉じるのである。

さて、Xhanfise Kekoについてはオルタナティヴ映画史を標榜するに辺り、絶対に欠かしてはならない映画作家であると思うので、今後もアルバニア映画の重鎮と共に作品を取り上げる予定である。こうご期待。