Lana Gogoberidze&"Me vkhedav mzes"/ジョージア、私には太陽が見える
"მე ვხედავ მზეს" / "私には太陽が見える" (監督:Lana Gogoberidze, ジョージア, 1965)
カティアはジョージアの田舎町に生きる盲目の少女だ。唯一彼女が見ることのできるものは太陽の光だけだった。そんな彼女が生活するのを助ける存在がソソイアだった。彼はカティアを慕い、いつも傍らにいる。2人は切り離せない存在だった。
まず印象的なのは音である。OPクレジットが流れる際、カメラが電車の最後尾からトンネルを行く姿を映し出す時、そこでは禍々しい音楽が流れる。そしてそこに重なるのは断末魔のような金属音だ。その不穏さは一種異様なもので、この先に来たる脅威を予告するようだ。
そうして脅威が迫りくるなかで2人は逞しく生きようとする。だが脅威は明確な形で彼らに降りかかる。軍人たちの登場、恩人である男の死。そういった現実はカティアたちの心を少しずつ疲弊させていくのである。
そんな逼迫した状況とは裏腹に、監督が紡ぎだす映像には鮮やかな瑞々しさが宿っている。例えば作業をする農夫たちの姿を横移動かつ長回しで捉えていく様にはそこに広がる日常の空気が美しく切り取られている。そして脅威から逃れようとする2人が、海辺を歩く場面がある。白と黒の濃淡が繊細に揺れる海と空の風景は息を呑むほど美しいものだ。
そして2人は決断を迫られる。この辛く苦しい世界で共に居続けるのか、それとも別れそれぞれの道を行くべきなのか。そんな人生のこれからを決めてしまうであろう選択に直面する彼らの姿を、監督は優しく見つめるのだ。
Lana Gogoberidze (ジョージア語表記:ლანა ღოღობერიძე)は1928年、トビリシに生まれた。トビリシ国立大学とモスクワ国立大学で映画製作を学び、50年代から映画監督としてデビューする。1984年製作の"Day is Longer than Night"はカンヌ国際映画祭にも選出されるなど話題になる。その後は政治家にも転身、2004年にはフランスのジョージア大使に任命されるなど幅広く活躍している。