鉄腸野郎と昔の未公開映画を観てみよう!

鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!の別館。ここでは普通の映画史からは遠く隔たった、オルタナティブな"私"の映画史を綴ることを目的としています。主に旧作を紹介。

Gábor Pál&"Angi Vera"/ハンガリー、共産主義と愛

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"Angi Vera" / "アンギ・ヴェラ" (監督:Gábor Pál, ハンガリー, 1979)

18歳の看護師ヴェラは病院の劣悪な環境に心を痛めていた。それを共産党の上層部に訴えた所、党の教義に反するということで看護師を辞めさせられ、田舎町に位置する学校に送られる。ここでヴェラは共産党の教えを叩きこまれるのだったが……

序盤において印象的なのは、ヴェラと他に集められた女性たちとの交流である。ある者は教義に従い、ある者は自由に振る舞いながら、密な関係を築き上げている。時には柔らかに融和することがあれば、時には激しく衝突することもある。共産党の名の元に、女性たちは奇妙な離合集散を繰り返す。

今作は1979年製作なのだが、この頃は共産党の検閲が緩かったのか、教義への批判的な視線が随所に見られる。最初は反体制的だったヴェラがだんだんと共産党に感化されていく様は不気味な感触を宿している。さらに女性の裸が何度も出てきて、そこからも割にこの時代のハンガリーは開放的な時代だったのではないかと推察される。

そんな中、ヴェラは自身らの授業を受け持つ教師に恋をする。その一方でともに勉強をする妻子持ちの男は彼女に片思いをしている。中盤からはこの古典的なメロドラマ的展開が牽引力となる。暖色を基調とした格調高い映像は、その愛の彷徨いを静かに彩っていく。

ここにおける緊張感は最後の場面で最高潮を迎える。学校の公聴会共産党の上層部がやってくるのだが、その会の間、3者の視線が静かに、だが力強く交錯していく。そして彼女は立ち上がり、今後の人生を決める言葉を紡ぎだす。そこに共産主義の時代を生きることの大いなる苦悩が立ち現われるのである。この時代それ自体が共産主義だったのに、そういう映画が作れることは割と驚きである、"昔の"という枕詞がつけば認められたんだろうか。

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