Ljubiša Georgijevski&"Planinata na gnevot"/北マケドニア、大いなる受難
"Планината на гневот" / "憤怒の山" (監督:Ljubiša Georgijevski, 北マケドニア, 1968)
第2次世界大戦の終結後、北マケドニアに共産主義の波がやってくる。そしてこの潮流に共鳴した農民たちは農地の集団農場化を始める。団体のリーダーである男は勇猛な弁舌を以て農民たちを説得し、集団農場化を進めるのだったが……
本作で白眉なのは監督の演出のダイナミクスである。彼が北マケドニアの壮大な自然と農民の群衆を同時に捉える時、そこには凄まじいまでの圧が生まれる。豊かなる生命力、強靭たる精神力、そういったものが白と黒の端正な映像からは横溢するのだ。その様は北マケドニアのヤンチョー・ミクローショといった風であり、今作は彼の制作した傑作群に勝るとも劣らない力を備えている。
そんな中で、裕福な農民たちは自身の不利益を鑑みて、集団農場化への参加を拒否する。それでも力ずくで強行しようとする男だったが、実は仲間の農民たちすらもこの計画に乗り気ではないことを知り、徐々に孤立し始める。
そして本作はさながらキリストの受難劇へと姿を変える。不信の末に迫害されることとなった男は北マケドニアの荒野を彷徨うことになる。ボロボロになりながら荒野を踏みしだき続ける姿、その一方で自由を求め進み続ける群衆の姿。それらは神々しく圧倒的な聖性を湛えているのだ。