鉄腸野郎と昔の未公開映画を観てみよう!

鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!の別館。ここでは普通の映画史からは遠く隔たった、オルタナティブな"私"の映画史を綴ることを目的としています。主に旧作を紹介。

Kokan Raconjac&"Izdajnik"/セルビア、裏切者の鎮魂歌

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"Izdajnik" / "裏切者" (監督:Kokan Raconjac, セルビア, 1964)

舞台は第2次世界大戦中、そして今作の主人公はパルチザンに所属する男である。彼はドイツ軍に支配されたベオグラードで破壊活動を行っていたが、ある時ドイツ兵に捕まり、凄惨な拷問を受けることになる。このトラウマが原因で彼はドイツ軍に寝返り、仲間たちを殺害する命を受けるのだが……

今作において印象的なのは、どこまでも真っ黒なベオグラードという都市である。建物は薄汚れ、更にはその間隙はドス黒い闇で包まれている。まるでここには一切の希望は存在しないと声高に主張するようだ。この悍ましさがこのセルビア映画を牽引する原動力となっている。

そして男は裏切者として仲間たちを次々と殺害していく。ある時は開けた道路の真ん中で、ある時はアパートの屋上で。彼は仲間たちを皆殺しにしていくのだ。良心の呵責はありながらも、殺しの手は止まらない。そんな彼を救うのはただ1つの死だけに思われた。

この時代、他の東欧諸国ではいわゆるパルチザン映画が隆盛を誇った。例えばルーマニアの"Duminică la oră 6"やスロヴェニアの"Ne joči, Peter"、ブルガリアの"A byahme mladi"が一例である。今作はこれらの作品に様式として酷似しているが、主人公が元パルチザンである裏切者という特異性から不気味な捻じれが生まれることになる。今作は実質、反パルチザン映画としての表情を持っているのである。

さらに今作は暗殺に従事する男の姿を描き続けることによって、彼の抱く出口の見えない絶望感を徹底して描いていくのである。そして追いつめられた先に何があるか。それは死こそが救いであり運命であるという残酷な真実である。この中で、裏切者はただただあっさりと命を屠られるしかないのである。

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